賃金のために戦利品の獲得を行うファーマーが、依然として自分が自由にプレイすることを気にしているというのは、不思議に思えるかもしれない。しかし、Donghuaのオフィスがあるビルの1階にあるインターネットカフェの午後9時頃の光景を目にすると、この奇妙さの半分は解消できる。息苦しさを覚えるような薄暗いネットカフェには、デイシフトを終えたばかりの10人ほどのパワーレベラーたちが、楽しそうにゲームプレイを行っている。彼らの全てがWorld of Warcraftをプレイしているわけではないが、大多数は自分の個人アカウントでWorld of Warcraftにログインし、1日の大半を使っているAzerothの世界で自由な時間を過ごしている。
この光景は別段特別なものというわけではない。中国のゲーミング・ワークショップでの昼夜の仕事終わりには、労働者たちがついさっきまで12時間もの間プレイしていたまさにそのゲームをプレイしている光景を目にすることができる。そしてそれはある程度ゴールドファーミングに生かされてもいる。ゲームは非常に複雑で、ボスが容易にすべてを把握できるようなものではないため、労働者にはプレイヤーであることも求められているのだ――互いに成長しあい、仕組みやショートカットするすべを見つけ出すために。「私自身が労働者であった頃、」Donghuaでテクニカルサポートを担当する、21歳のFan Yangwenはこう語る。「プレイすることは学ぶことであったため、プレイすることがとても好きだった。」しかしそれはプレイするために学んでいるのか、仕事のために学んでいるのか?この問いに対して、Fanはやれやれといった感じで「両方さ。」と答えた。
Fan自身は、労働時間外のプレイを無報酬のファーミングのための研究としている、印象的なケースであるといえる。彼はまれに見るWorld of Warcraftのとりこであり、ファーミングされたゴールドを購入したことがある中国人ゴールドファーマーだ。(「そう、1万ほど買ったことがあるよ。」と彼は教えてくれた。「こんなにファーミングしてる時間がないからね!」)仕事後にFanがネットカフェに姿を現すと、小さなイベントが発生する。他のDonghuaの労働者たちが、イスを寄せて彼のプレイを見ているのだ――彼のトップレベルのウォーロックキャラクターでの強力なプレイを見るということは、リアルか仮想かにかかわらず、カネで買うことができないからだ。
なぜFanが他の同僚たちに大きく優勢をとっているかと言えば、彼はゴールドファーマーやパワーレベラーといった労働者が近づき難いゲームのエリアでそれを成し遂げたからだ。そこにはゲームの終端としても知られる、プレイヤーがこれ以上レベルを上げることができないほどに経験値を積み重ねた後にのみ体験できる、エピックチャレンジのフェーズがある。これらのチャレンジで得られる報酬も驚くべきもがある:凄まじくステータスをブーストできる稀少な武器や防具や、見るも鮮やかなグラフィックのものなどだ。そして最も「渡す」ことができないモノとしては、ゲームで最も難易度が高いダンジョンを攻略することでのみ手に入れることができるという点がある。これを行うには、40名からなる他のプレイヤーたちと「レイド」を組織して臨まなければならない(これより少なければ、プレイヤーはあっさりと片づけられてしまうか、重要なモンスターをどれ1つとして倒すことなく死を遂げることになるだろう)。参加している各プレイヤーは、この希少なアイテムを狙っており、参加者間での分配について交渉する必要もある。この究極的なゲームの行きつく先にあるものには、巧みで重要な効果がある。その1つには、「ギルド」を成長させるというものがる――数十人、ときに数百人からなるプレイヤーによるチームで、共にこれらの高レベルダンジョンを定常的に攻略することを目的としている。また別の例では、全仮想アイテムのクラスからファーマーをシャットアウトするという点がある――もしトレードされれば、ゲームで最も市場性のあるアイテムとなるためだ。
長い間、DounghuaのボスであるFeiとBao(従業員たちにはLittle Bai、Brother Baoとして知られている)は、レイドギルドによるハイレベルコンテンツへのアクセスに対する嫉妬を看ることができなかった。しかしFanは別の視点を見出していた:レイドギルドは競合相手ではなく――彼らは悟ったのだ――ソリューションであったのだ。Donghuaは40人の従業員を1つのチームにまとめた。厳しいダンジョンでトレーニングを積ませ、ほんの数百ドルで、顧客を希望のダンジョンへと連れて行くことができるようになったのである。そして顧客の切望していたアイテムがドロップすれば、チームは何も発することなく、顧客にそのアイテムを手に入れさせることができたのだ。こうすることで、史上に持ち込むことができなかったハイエンドの宝をRMT市場へと持ち込むことに成功した。つまり、ゴールドファーミングの類は、ハイエンドコンテンツでも生き抜く術を見出したのだ。
Brother BaoとLittle Baiが去年の4月にチームを組織したとき、最初にメンバーとしてリストされたのが、当時Donghuaのベテラン従業員、Min Qinghaiその人だった。
「レイドチームに合流する前には、こんなに多くの人と一緒に仕事をしたことがなかった」Minは私にこう教えてくれた。彼らはオフィススペースにひしめき合う、40人の若い男たちで、最初はとても混沌としていた。2、3人のスーパーバイザーが、まるで将軍のごとく指示を与える。ダンジョンのレイドは常にパズルのようだ:各ボスをどのような作戦で殺していくかというのがその主要なチャレンジである。40人のプレイヤーをそのように動かしていくということは、めまいがしそうなことだ。しかしチームメンバーは、あたかもパワーレベリングを行っているがごとく、熱心に取り組んだ:1日12時間、週7日、来る日も来る日も異なるダンジョンへと挑んでいる。
特に最初のうちは、たくさんの叫び声も飛び交っている。オーダー自体はスーパーバイザーから指示されるが、実際の戦略はチームメンバー自身が行っている。「これにより僕たちは共同作業の間隔が身に付いていっていて、叫び声が飛び交う頻度は減っていっています。」とMinは言う。「最終的には、何も話す必要がなくなりますよ。」無言の協調性で、40人が互いに頼りながらダンジョンを進んでいく。ハンターはいつ、どの距離から攻撃を行うべきかを知っているし、プリーストはリズムよく回復魔法を使い、ウィザードは自分の魔法でどのくらいのダメージを与えられるかを完全に把握しているのだ。
そこでのMinの役割は?通訳が適切な英単語を思いつくのに手間取っている間に、Minが直接私の方を向いて、私が彼から発せられた唯一の英語を耳にした。「タンク」と彼は滅多に見せない微笑みを浮かべながら答えた。タンク――重いアーマーに身を固め、戦闘中にもっとも強力な敵の注意を引き、その攻撃をすべて受け止める役割――は、レイドの要である。タンクが死ねば、他のメンバーの命もそう長くはもたない。
「ともに働き、共に遊ぶことは良い感じで」Minは言った。「とても...”shuangu”なんだ。」この言葉の意味は「オープン、クリア、爽快」というものだ。「世界のすべてのギルドが倒したがっているようなボスと戦いに行くということは、ある種の達成感があるんです。」
その終わりは何の前触れもなく訪れた。ある日、この40人によるレイドは、顧客不足から中止するとの言葉がボスから告げられた。同時に、チームメンバーはゴールドファーミングに戻り、かつてMinにもスリルを与えてくれた、5人で挑むダンジョンで戦利品を集める生活が再び始まった。今は何のチャレンジも感じることはない。「もう強大なボスモンスターと戦いに行くことはないでしょう。」Minは語った。「何度も何度も同じことを繰り返すよう指示されているんです。毎日僕は同じものを見ています。耐えられなかった。」
Minは仕事を辞めたが、次の仕事もやはりファーミングであった。新しい仕事は、Timbermawで、以前よりもまったくもってエキサイティングなものではなかった。しかしDonghuaのときよりもリラックスでき、疲れるものでもなかった――「あそこで12時間働くのは、ここで24時間働くようなものだ」――そして彼が最も優れたギルドで、使命を帯びてタンクを行うことはもうなかった。
この間、Minはプレイしながらするような仕事をしていたことを忘れようと努力していた。しかしこのような単調な仕事であっても、簡単なことではない。ある日いつものように狩りを行っていると、うっかり高レベルモンスターとの戦闘になってしまった。凄まじい勢いでHPを失いながら、彼はマウスを手に必死に逃げ始めた。彼はキーボードの上にのめりかかるように興奮しながら追手を避け敗走した。彼のボスである26歳で熱心なゲーマーでもあるLiu Haibinは、彼のそばへ来ると彼を応援し始めた:「Yeah, yeah, yeah . . . go!」
遂にモンスターは追いかけるのを止め、Minは得るものもなく、自分の考えを説明した。「これは本能的なもので――抑えることができないんだ。」彼はつづけた。「プレイしたいでしょ。」
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-Bucco