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    #97 - 2007/06/20 02:52 AM New York Timesによるゴールドファーマー記事(1)
    Bucco 管理者 Offline
    Admin
    投稿魔王

    登録日: 2007/05/27
    投稿数: 2648
    世界的に見ても権威ある一般紙New York Timesで、かなりの長文をもってMMOにはびこる「中国人ゴールドファーマー」の実態を調査する記事掲載されています
     引用:
    100ゴールドを稼ぐごとに10元、つまり$1.25(≒150円)を稼いでいる。時給に換算すると30セント(≒36円)前後の計算だ。彼のボスは、販売業者にそのゴールドを販売することで、$3(≒370円)を得ており、その販売業者から消費者(アメリカや欧州に在住するプレイヤー)への末端価格は$20(≒2460円)となっている。

    その内側や、その本当の生態が見えづらいゴールドファーマー。非常に興味深い記事であるため、全文訳をお送りします――が、あまりに分量が膨大であるため、2回に分けて掲載予定。今回は第一部です。
    _________________________
    -Bucco

    Top
    #98 - 2007/06/20 02:53 AM New York Timesによるゴールドファーマー記事(1) [Re: Bucco]
    Bucco 管理者 Offline
    Admin
    投稿魔王

    登録日: 2007/05/27
    投稿数: 2648
    中国人ゴールドファーマーの生活
    by JULIAN DIBBELL
    翻訳:Bucco

    真夜中0時まであと1時間という頃、ナイトシフトは既に3時間経過しており、あと9時間残っている。中国は南京にある、こぢんまりとした蛍光灯が輝くオフィス内のワークステーションで、Li Qiwenは上半身裸でタバコを吸い続けながらといったスタイルで、確かな目的をもった視線を目の前のコンピューターに向けていた。そのスクリーンには、木が生い茂った地形に城の廃墟が散乱し、戦士たちが狩りの対象としているシカが映し出されている。Liや、ウィザードの格好をした彼のスタッフは、午後8時から敵のモンクを延々と倒し続けている。死体を次々とマウスでクリックし、そのたびごとに、いくばくかの仮想コインや、魔法の武器を拾い集め、パンパンになったバックパックに放り込んでいる。

    一晩に12時間、1週間に7日間、月に2、3日の休みを挟みつつ、これがLiが生活のために行っているすべてである。2006年夏の夜、彼のスクリーンに映し出されているのは、いつもの通りWorld of Warcraftであった。オンラインファンタジーゲームで、自身が作ったあバター――ナイトエルフのウィザードや、戦士のオーク、その他にもトールキンの世界から飛び出したようなキャラクター――を介したプレイヤーが、冒険の舞台となるAzerothの大地を舞台にモンスターを倒し、最低レベルの貧弱な状態(1)から最も高いところ(70)に至るまで、ポイントを稼いでいる。世界中で800万人を超える人々がWorld of Warcraftをプレイしており――これはつまり全地球上で1000人に1人がプレイしていることになる――、Liがログインしている時には、同時に数千に及ぶ他のプレイヤーもログインしている。彼らはゲームの広大なヴァーチャル世界を共有しており、街に集まっては戦利品の交換をしたり、コインを集めるべく敵を探しまわったりしている。すべてのWorld of Warcraftのプレイヤーはコインを必要としており、そのほとんどがたった1つの理由による。それは次のレベルに到達するために、敵と戦うための仮想の装備品を賄うというものだ。そしてゲームで必要とされる仮想通貨を手に入れる方法は2つしかない。1つは何時間もの時間をかけて自分で収集して回るというもの。そしてもう1つはリアルマネーを投じて他の誰かから買うというものだ。

    シフト時間が終了すると、Liはその夜の成果を彼のスーパーバイザーに報告し、1週間の終りになると、他の9人の同僚たちと同様に給料を得る。Liは、100ゴールドを稼ぐごとに10元、つまり$1.25(≒150円)を稼いでいる。時給に換算すると30セント(≒36円)前後の計算だ。彼のボスは、販売業者にそのゴールドを販売することで、$3(≒370円)を得ており、その販売業者から消費者(アメリカや欧州に在住するプレイヤー)への末端価格は$20(≒2460円)となっている。Liとその同僚が働く小さな商業スペース――労働者部屋とスーパーバイザー部屋の2部屋からなる――にはバスで30分の距離に宿舎も併設されており、年間8万ドル(≒986万円)程度のつつましいビジネスのためのフィジカル・プラントを形成している。中国全土を通じて、ゲーム会社によって運営されているかどうかにかかわらず、このようなビジネスが数千件にも及ぶと試算されている。総計で10万人以上のこうした労働者により、仮想アイテムの全世界市場は18億ドル(≒2219億円)にも上っている。この労働者によるオペレーションは、きれいな言い方をするとyouxi gongzuoshi、すなわち「ゲーミング・ワークショップ」ということになるが、世界中のゲーマーの間では、「ゴールドファーマー」としてより知られている。ここ数年、インターネットにより生み出された、一風変わった職業というものはいくつも存在するが、中国人ゴールドファーマーというものを超える何かを考え付くのはまず無理だろう。

    MMOとして知られるmassively multiplayer online role-playing gameのマーケットは急速に成長しており、少なくとも80以上のタイトルが稼働中で、開発中のものを含めるとその数はさらに多い。世界中の総プレイヤー数も3千万程度とみられている。カリフォルニア州アーバインを拠点とするBlizzard EntertainmentからリリースされたWorld of Warcraftは、史上もっとも収益を上げたコンピューターゲームであり、月額課金とその他の収益で、年間10億ドル(≒1232億円)に迫る勢いとなっている。Dungeons & Dragonsのようなデジタル化される以前のロールプレイングゲームのころからそうであったように、典型的なMMOでは、プレイヤーは自身のファンタジーキャラクターを率いて、戦闘や冒険の生活に身を置くこととなり、それは数か月から数年もの間プレイが継続するものとなる。しかしながら、これもD&Dの時代からの真実として、この仮想な生活の物語の進行は、地道さと、数学的正確さに彩られている。

    MMOのプレイヤーは極めて狂信的なゲーマーであることが多く、自分の現実世界の仕事よりも、キャラクターのキャリアのために没入するケースも決して珍しくない。確かに、MMOは経済体であるといっても過言ではない。どのMMOをとってみても、何かしらのカネの存在があり、その需給には不変の要求がある。World of Warcraftではゴールドコインと呼ばれ、韓国で有名なLineage IIでは「アデナ」という名前で、日本初のヒット作FINAL FANTASY XIでは「ギル」という名前で存在している。そしてこれらすべてのゲームにおいて、装備品や戦闘で使用するアイテムを購入するために、この架空の通貨を大量に消費している。カネを得るため、プレイヤーは様々に存在する収入源のチョイスを行っている。もちろん倒したモンスターからの戦利品を収集することができるが、プレイヤーは武器やポーション、その他役に立つアイテムを生産して他のプレイヤーに売ったり、果てはその生産に必要なハーブや革といった一次素材を生産者に売ることもできる。ゲームデザインによる、この繰り返し、時間消費を伴う行為を繰り返すことは、「グラインド(Grind)」として知られている。

    十分な時間が足りなかったり、グラインドに耐えられないプレイヤーには、この仮想の戦利品を獲るために、常にもうひとつの方法がある:リアルマネーだ。MMOの創成期より、プレイヤーはこのグラインドの成果物を手に入れるため、法定貨幣――ドル、円、ポンドなど―を支払いたがっていた。そして殆どの有名なオンラインゲームではこれらの行為を厳しく禁じるルールがあるにも関わらず、プレイヤーはいつも売りたがってきた。仮想の品物をリアルマネーを対価に販売する行為は、リアルマネートレードまたはRMTと呼ばれ、それは90年代にeBayを舞台に発生した。仮想の防具や武器、ゴールド、その他のアイテムを売りたいプレイヤーがオークションへの投稿を行い、入札と支払いが完了すると、ゲーム世界の中で落札者と落ち合う手筈を整え、販売者のアカウントから購入者のアカウントへと品物の受け渡しが行われる。

    事実、ごく最近まで、eBayはすべての仮想経済にとって大手取引所として機能していた――EverQuestやUltima Onlineに始まり、マキャベリ主義のEVE Online、そして自由な砂場的存在のSecond Lifeに至るまで。これらの活動は、ゲーム会社が禁じる授受を促進することに関連したカスタマーサービスの問題からeBayがRMT売買を禁じることで、公式な終焉を迎えた。しかし、この時までにはオンラインオークションのタグセール経済は驚異的に成長して久しかった。ここ何年もの間、仮想金品の舞台はプレイヤーベースではなく、仮想通貨のメガストアとして台頭するIGE、BroGame、Massive Online Gaming Salesといった小売型へと移行していた。簡単なクリックで買い物ができ、すぐにゲーム内で仮想通貨を受け取れるという、数百万ドル規模のビジネスだ。これらはこのグレーなマーケットにおけるWal-MartやTarget的な存在であり、これらのメガストアが格安のおもちゃや布製品を中国に求めたという経済的な構図は、仮想物についても中国のゴールドファーマーに求めたというものにあてはめて考えることができる。

    確かに、表面上はゴールドファーミングを、おもちゃ製造や布製品の大規模製造、その他でも、西洋の需要を満たすために中国で急成長を遂げた産業と区別できる点は殆ど存在しない。賃金、マージン、労働者の住居、長時間シフト、終わりのない労働――これらすべてが継承されている。現在の中国の多数の労働者のように、多くのゴールドファーマーは移住者だ。例えば先ほどのLiは、あまり発達していない地域から、中国における産業の重点的な地域である南京へとやってきた。30歳の時、彼はこの仕事に対して歳をとりすぎており、自身もそれを感じていた。彼は私に、結婚して家庭を持ちたいと打ち明けてくれた。しかし、前職の車修理よりもさほど良くはない現在の給料では、実現させるのは難しいのだという。無料の会社が提供する住居があるということは、彼の給料が高くないということを示している――食糧、タバコ、バス代、リラックスできる場所だという地元wang ba(インターネットカフェ)での通信費――貯金するのは難しいとLiは言う。「できる。が、山ほど節約しなければならない。」

    これがこの職業に関する簡単な概要だ。ただし、多くの側面を見逃している。1、2時間の間、LiにTechnicolorのファンタジー世界の説明を受けながら、退屈で機能的な彼の仕事場に座ってみると、ゴールドファーミングというものが、単純なアウトソースできる仕事ではないということが理解できる。

    ナイトシフトが終わり太陽が昇っても、LiとLiの同僚たちがそのことを知る術は、太陽光を防ぐために窓に張られたプラスチックのシートの隙間から漏れ差し込む光しかない。Liが終業のタイムカードを切ると、別の労働者が彼の席に座り、彼のアバターを操って、Azerothを舞台に同じルーチンワークを継続している。殆どの日で、Liの代わりに操作を行っているのは、22歳のWang Huachenだ。彼は大学で法学を修了した後、1年前からゴールドファーミングを行っている。ほどなくして、Wangは私に話しかけてくれた。彼は資格を得るためのテストを受けるつもりだが、特に急ぐつもりはないという。

    「この仕事を恋しく思うだろう」と彼は言った。「退屈になりえるが、僕はまだ楽しめているんだ。だからこの感覚を失うとさびしくなると思う。」

    2席離れたところに、Wangの同僚で24歳のZhou Xiaoguangがデイシフトでモンクの大量虐殺をおこなっていた。プレイしている彼の顔を見ても、何かしら楽しさというものがこの仕事にあるとうは想像もできないだろう。そしておそらく「楽しさ」というのは最も適した表現ではないのかもしれない。ビデオゲームに長時間を費やした経験がある人はご存じのとおり、プレイ中の人の顔は多くのゲームの困難さを反映するかのように、面白いほど真剣なものになる。いずれにせよ、Zhouにとってゴールドファーマーの日々のルーチン作業において、仕事と遊びの区別をつけることは困難だ。「僕は毎日12時間ここにいます。」通り過ぎるシカを一撃に仕留めながら彼は続けた。「完全に仕事というわけじゃない。けど遊びと仕事に大きな違いは無い。」

    ここで再び、戦闘魔法を巧みに操っていたWang Huachenに向かい、どうしてこのような状況で、彼自身がコメントしたように「楽しめることがある」のかについて質問した。

    彼は画面から目を逸らしもせず答えた。「説明できないよ。ただ、そう感じるだけなんだ。」

    2001年、Indiana大学の経済学者で、かつEverQuestのプレイヤーでもあったEdward Castronovaが、仲間のプレイヤーが集めた仮想金品の割合をまとめ、それらの金品のRMT価額を用いて、すべてのゲーム内活動から生み出される1年間の金額を計算したドキュメントを発行した。彼がたどり着いた1億3500万ドル(≒166億円)という数字は、その当時のEverQuestのRMTマーケットサイズの25倍に相当するものだった。現代にあてはめ、適用範囲を広げると、Castronovaの結果から導き出される今日の仮想経済市場規模は、70億から120億ドル(8628億から1兆4791億円)で、ボリビア、アルバニア、ネパールに匹敵するオンラインゲーマー人口によって生み出されている経済活動結果だ。

    さほど巨大なものではない、確かにそうではないが、恐らく数字そのものよりも示すものは大きいと言えるだろう。Castronovaが試算したEverQuestのGDPにより、オンラインゲーマー――現実のカネとの交換がなかったとしても――は現実の富を生み出せることが示された。そうすることで、Castronovaはプレイとプロダクションの間の経済的特徴に興味深い変化が起こっているということを示した:世界のどこかでそれは崩壊してしまった。プレイが現実の仕事を始めてしまったのだ。

    この変化は全世界で歓迎されたわけではなかった。事実、多くのゲーマーの目には、リアルマネートレードは本質的に詐欺的行為として映っているのである――ほんのごくわずかだけ洗練されたチート行為。すなわち、モノポリーで他のプレイヤーのボードウォークやパークプレイスといったマスを現金20ドルで買わないか、と持ちかけているようなものだからだ。大多数のゲームデザイナーと、プレイヤーの中にも、この問題をより全体的なものとして見る向きもある。彼らが指摘するのは、リアルマネートレードはゲームに害を与えるものであり、その理由として、加熱するゴールドファーミングや他の利益のみを考慮・追及した動作により、初心者のゲーム進行を妨げるという点を指摘している。仕事による、このある種の経済的不公正により、不満を生み出している。理論上、この不満はRMTに関連するすべてのものに向けられている。購入者から小売業者、果てはゴールドファーミングを行うボスたちにまでだ。そしてもっともながら、米国のWoWプレイヤーが、仮想ゴールド販売業者であるIGEを訴えるに至った。

    しかし日々の問題として、これに直面しているのはファーマーたちだ。例として、21歳のゴールドファーマー、Min Qinghaiのケースを見てみよう。Minは、南京から南に200マイルほど離れた中堅都市の金華で、元工場だったスペースでそのほとんどの時間を過ごしている。彼が働くのは、彼の寝どこがある労働者の居住フロアの2階下のフロアだ。毎週84時間をファーミングに費やす生活を送る2年間、彼は食事のとき以外殆ど外に出ることはなかった。しかし彼は、彼が数えることができるよりも多く死んでいた。そして去年9月の温かい午後、昼食休憩と夕食休憩のちょうど間くらいに、それはまた起こった。

    彼が出くわすWorld of Warcraftのモンスター――どう猛で、灰色の毛皮に身を包んだTimbermawクランのベアマン――は、彼の高レベルキャラクターには全く見合ったものではなかったが、彼らは抵抗し、ときに彼を制することもあった。ちょっと目を離していた後、Minは彼のハンタークラスのキャラクターが死の瀬戸際に立たされていることに気がついた。目前に広がる、コンピューターアニメーションによって振り下ろされる武器によって慌てさせられた。Minが正確に何が起こったのかを把握できたのは、ハンターが死して地面に横たわり、戦闘が終了した後だった。ゲームのチャットウィンドウには、Minに当たった攻撃と、それによるダメージポイントの記録が残されていた。記録は明らかだった。モンスターはソロでなかったのだ。戦闘中に偶然他のプレイヤーに発見され、Minにそっと近づいて打ち倒したのだ。

    Minは背もたれにもたれかかりストレッチした後、10分間は何もすることがなくなる退屈なキャラクターの蘇生処理を開始した。ファーミングでの最大生産量を考えると、ゴールドファーミングの代わりに死亡処理に時間を食われるのは、労働者の仕事にとってリスクとなる。また、日々の給料は収穫量に基づいているため、死亡のために失われた時間は、ファーマーのポケットから失われていくカネに他ならない。しかし、死はゴールドファーマーにとって単なる経済的障害以上のものになることがあり、これはそのうちの1つに過ぎない。Minは死体の場所に戻り、周囲を注意深く調べて攻撃者が潜んでいないかどうかを確認し、蘇生後すぐにまた攻撃されないようにする――死そのものよりも大きな被害は、どうしてそれが起こったか。もっと厳密に言えば、何が死をもたらしたのか。他のプレイヤーである。

    WoWプレイヤーは、そう頻繁に楽しみとポイントのためだけに他のプレイヤーを殺さない、なんてことはない。彼らはやるのだ。しかし、その対象者がゴールドファーマーであった場合、その可能性は極めて高くなる。ゴールドファーマーの狩りパターンは極めて繰り返し性が高いため、発見しやすく、アンチRMTのターゲットとなる。その敵対心は、個人的な皮肉めいたメッセージから、不必要な待ち伏せに至るまで、ファーマーの生産活動を止めうる様々な形となって現れる。YouTubeやGameTrailersで広がるユーザー作のWorld of Warcraftビデオには、「中華ゴールドファーマーは死ね」「中華ファーマー駆除」などとして、プレイヤーがファーマーを殺害するシーンをおさめたものが多数存在する。これらの活動は、Minもファーミングを行っていた、WoWのTimbermawに支配された狭いエリアで行われている。この場所はファーマーには有名な場所で、西洋のプレイヤーがチャイナタウンと呼ぶことさえある。スタンフォードに拠点を置くMMO学者Nick Yeeは、現代のアンチ・ゴールドファーマーの修辞学と、中国移民労働者への19世紀の米国文学には、共通点(「ゴキブリ」「ネズミ」「駆除」といった言葉の再発)があると指摘する。

    Minの英語力は、彼の道を阻む憎悪のすべてを把握するほどのものではない。だがしかし彼はポイントは理解している。彼は一般のプレイヤーに囲まれて恥ずかしさを覚えている。時に、彼らの言語さえ話せれば、彼らの中に自分の居場所がないと信じている人たちに、どうやって自分のことを説明しようかと考えることさえあるという。「考えはまとまっていて、普通のプレイヤーは、すべての人がゲーム内で同じことをしているわけではないと理解すべきだ。」と彼は言う。「彼らは遊んでいる。僕らは生計を立てているんだ。」

    ゲーム会社がすべてをよく理解していることも特徴的だ。大多数のMMO会社のように、BlizzardはRMT利用者ではなく、RMTを嫌悪する利用者の側に立った。1年ほど前、Blizzardは、ファーマーに属すると特定された5万を超えるWorld of Warcraftのアカウントを強制大会処分とした旨を発表した。これは数百万のファーミングによるゴールドをマーケットから根絶する動きの始まりであり、去年春には1ゴールドあたり6セントであった交換レートを1月の時点で35セントまで高騰させた。

    もちろん、誰一人としてファーマーと同等にルール違反を犯したカスタマーが処罰されるべきだなどとは考えていない。プレイヤー間では、RMTに関する議論は公平性を巡る話しに終始しがちであるが、ゲーム会社においては、唯一のポイントは何がビジネスにとって良いことか、という点だ。RMT購入者を厳しく取り締まることは、RMT販売者を厳しく取り締まることに比べてマーケティングセンスに乏しい行いで、これはドラッグのユーザーよりも供給者を厳しく取り締まるのと同じようなものだ。(RMTをビジネスモデルに組み込んでいる会社は殆ど存在しない。EverQuestを提供するSony Online Entertainmentは、実験的に公式なRMT環境を用意して、プレイヤーから手数料収入を得ることを始めている。)Electronic ArtsのVPで、Dark Age of CamelotのクリエイターでもあるMark Jacobsは次のように述べている:「5万人の中国人ファーマーを駆逐して同情を得るのか、それとも1万人の購入者であるアメリカ人を駆逐して同情を得るのか?これは別に人種の話しでは全くない。購入者を駆逐した場合、ゲームをプレイするためにカネを支払っている、守らなければならない顧客を駆逐しているということになる。そして彼らは駆逐されたのちにフォーラムで、会社とゲームについて非常に汚い言葉を書き連ねることになるだろう。」

    WoWから排除されることによるファーマーへのコストは厳しい。どんなに少なく見積もっても、キャラクターをもう一度成長させなければならない分、一時的に生産性が低下するためで、同時に、その時点で当該アカウントに蓄積されていた戦利品類が失われることになるからだ。中国人ゴールドファーマーの中には、ファーマーの追跡者を避ける最良の方法は、そもそもプレイヤーと労働者との区別を困難にすることだと気づいた者もいる。これを行っている特化したものとして、Min Qinghaiが働くゴールドファームからほんの数ブロック離れたところに、別のビジネス拠点が存在する。フロアはほぼ同じサイズで、これも同様に整然と並んだ列に、ほぼ同じ数のコンピューターが並んでいる。しかし、この場所を歩いてみるだけで、よりシビアなオペレーションが行われているということに気づく。例えば、ここにはより多くの労働者がいる。デイシフトに25人、ナイトシフトに25人、各クルーは入口そばにあるタイムカードで管理されている。ここではシャツを着て仕事をしておらず、大多数は会社のイニシャルが入った白いポロシャツを着ている。管理者用の赤いバージョンもあり、シフトのスーパーバイザーが常に着用している。スーパーバイザーのデスク正面には大きな壁があり、次の意味を示す漢字が飾られている:協調、共同、誠実、効率

    この拠点の名前はDonghua Networksと言い、ここで行われているのは、ゲーマーが「パワーレベリング」と呼ぶ行為が行われている。通常のゴールドファーミングのように、パワーレベリングはWorld of Warcraftのグラインド行為を提供する――お金やアイテムを直接的に提供するのではなく、パワーレベラーはあなたの代わりに作業を行ってくれるというものだ。アカウント名とパスワード、それに300ドルほどを支払ってしばらく現実世界の生活を行っていれば、パワーレベラーのチームがあなたのキャラクターレベルを4週間もたたないうちに最高レベルへと仕上げてくれる。これは通常のプレイでは少なくとも4か月はかかる作業だ。

    Donghuaのオーナー――Fei Jianfeng26歳とBao Donghua36歳、2人ともゴールドファーミングの労働者として働いていた――にとって、ファーミングを離れてレベリングに移ってくることは簡単なことだったという。彼らいわく、パワーレベリングは強制退会を受ける可能性は低いという。また、ゲームにアクセスするためのアカウントも依頼者であるカスタマー自身のものであるため、仮想の仕事場へのアクセスを失うことに比べると、リスクも極めて低い。ただし、ここでの労働者にとっては利点は必ずしもあるとは言えない。クエストや追いかけるべき目標物は山ほど存在しているにも関わらず、支払いがそれによって変わることはないし、全く知識のないキャラクターでのプレイを強制させられることがストレスとなり、比較的自由があるゴールドファーミングの方を好む者もいる。

    Donghuaのパワーレベラーで、かつてのゴールドファーミングの仕事について、次のようにコメントしてくれた。「前の方が自分のためにプレイする時間がとれた。」


    ――後編へ続く
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